はじめに
団塊の世代ならこの曲を知らない人はいないエレキサウンドの名曲。特徴的なイントロを聞いただけで一瞬にタイトルを言えるはず。
ベンチャーズ(The Ventures)の通算15枚目のアルバム「ノック・ミー・アウト(Knock Me Out)」に収録されたナンバー。
邦題「10番街の殺人」、原題は「Slaughter On Tenth Avenue」
このアルバム「ノック・ミー・アウト」は1965年2月13日にリリースされ、ビルボード誌アルバムチャートに24週連続でランクインし続け、最高位31位となったヒットアルバムである。
またアルバムに先がけてシングルカットされた「10番街の殺人」は1964年10月に全米35位となるヒットとなった。
筆者の中学時代から大好きなこの曲だが、邦題と曲調が結び付かないなという思いがずっとあった。それが今回の調査で意外な事実が明らかになったのである。
オリジナル盤のジャケット
日本発売盤のジャケット
ザ・ベンチャーズの演奏
多くのヒット曲の中で筆者が一番衝撃を受けて大好きだったのがこれ。
ラジオから流れると自然に体が動きギターを弾いてる積りになった。今でいうエアギターというやつ。
いくつも聞き比べたがこれが一番オリジナルに近いような気がする。
10番街の殺人(Slaughter On Tenth Avenue) ザ・ベンチャーズ(The Ventures)
「10番街の殺人」が収録されたヒットアルバム「Knock Me Out」のジャケット
アルバム収録バージョン
ライブ盤
日本公演 1966年
65年の来日で日本に大エレキブームを巻き起こしたザ・ベンチャーズを抜きにポップスを語れない。
それほど当時の日本の若者に大きな影響を与えた。映画「青春デンデケデケデケ」の題材になった「ダイアモンド・ ヘッド」 「パイプライン」の他にも
「10番街の殺人」「ウォーク・ドント・ラン」
「キャラバン」等多くのヒットを飛ばした。
特に日本では人気が高く今でも年2回公演を行っている。
ところがこの軽快でノリノリの曲の題名がどうして「10番街の殺人」という物騒なものになってるのか疑問を抱きながらも、いつしかその疑問もこの曲を聞く魅力に忘れ去られていた。
それが今回調べてわかったのだが、この名曲には原曲があったのだ。
この曲のルーツは1936年まで遡る
なんと戦前の1936年に初演されたバレー・ダンサーとギャングを主人公にしたミュージカルコメディ「オン・ユア・トゥーズ(On Your Toes)」の中で登場する曲がオリジナルらしい。
自分を含めベンチャーズでこの曲を知った多くの人達は最初に聞いた時には同じ曲だとはわからないほどゆったりとしたテンポで全く異なる曲想であることに驚くに違いない。
それはまたベンチャーズの優れたアレンジ技術を証明することにもなる。
Vera & Gene
このように映画化もされている。
Vera Zorina
原曲はミュージカルの中の1曲だった
この原曲は今も世界中で愛されている「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」他多数のスタンダード・ジャズ・ナンバーを書いているリチャード・ロジャース(Richard Rodgers)が作詞家のロレンツ・ハート(Lorenz Hart)と組んで書き上げたミュージカルの中の1曲だったのだ。
このミュージカルの中の1曲としてそれなりに知名度はあったようで、いくつかのオーケストラの演奏が残されている。
Stanley BlackがThe London Festival Orchestraを指揮したもの
Jelani Eddington & Rob Richards at Pasadena Civic Auditorium
Lennie Hayton & The MGM Studio Orchestra
GISELE MacKENZIE & Roger Williamsのピアノデュオ(58年TV)
このような背景があったことが判明すると、当時の我々にベンチャーズのカバーが突然降ってきたかのような印象を受けたのは、単なる無知によるものだったようである。クラシックやミュージカルの素養が無かったから当然とも言えるのだが。
ベンチャーズのアレンジが秀逸
こうして原曲から劇的にアレンジされたR&Rナンバーとしてのベンチャーズ{十番街の殺人}だが、特にイントロのディミニッシュ・コードが衝撃的である。
さらにリード・ギターがユニゾン、オクターブと2重録音を駆使し、サイドギターが3本と最大5本のギターが使われているのが特徴である。
他にも日本で知られたアーティストもカバーしている。
いずれもベンチャーズより原曲に忠実なアレンジとなっている。
ザ・シャドウズ(The Shadows)
James Last
ベンチャーズのシングルリリースから更に遅れて74年にカバーされたエレキサウンドだが、むしろ原曲に忠実なアレンジになっている。74年にアルバム「Slaughter On 10th Avenue」を出している。
Mick Ronson(ミック・ロンソン)
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日本のカバー
日本でエレキブームを巻き起こし大人気だっただけに多くの日本人アーティストもカバーしている。
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