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歴史に残る名演「A Black & White Night Live」(5)

Roy Orbisonトリビュート
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第10曲 クライング(Crying)

61年に全米2位を獲得した大ヒット。ロック史に残る傑作バラードのひとつ。

「ランニング・スケアード」(61年)などと同じく、実体験をもとに書かれた作品だが、もともとは人気カントリー・シンガー、ドン・ギブソンのために作っていた「ワン・アゲイン」を発展させたものである。


邦題は「恋のむせび泣き」だが殆ど使われていない死語といえる。ジャケットも文字だけの手抜きなので、日本のレコード会社ではヒットを期待していなかったことがわかる。

自分でも気づいていなかった昔の彼女に対する感情を歌った曲で、ラブソングと失恋ソングが混じったような複雑な感情を歌い上げている。

歌詞の1番は昔の彼女と再会する場面を歌っていて、最初の部分で主人公は過去のことは何とも思っていないと考えている。しかし、彼女が「きつく手を握った」ことで、好意を持ってくれていたという事がわかった主人公は泣き出してしまう。

そして2番では一転、気づいてしまった彼女へのどうしようもない思いを綴っている。

ここで歌詞に出てくる”over you”は「君のことを思って」と「君とは終わった」の両方の意味を持っている。

人々の胸の内にある傷ついた感情を、こんなにもドラマティックに儚い声で歌い上げたアーティストは当時他に誰もいなかった。

まずは歴史的名演から聴いてみよう。

ロニーのリリカルでデリケートなリム打ちがロイの震えるような声と調和して聴く者のハンカチを濡らしてしまうことであろう。

またジェリー・ジェフのゆったりとしたバッキングはまるで暖炉のある暖かな部屋に導き、そして凍った心をゆっくりと溶かしてくれるかのようである。

ジェイムス・バートンのギターは、口数が少なく出しゃばらない、的を得たエレクトリック・ギター・バッキングとしてしっかり存在感を示している。

グレンのピアノは美しいタッチで流麗なストリングスとともに、ビューティフルな旋律を奏でている。

冒頭の打楽器の音がオリジナルではうっかりすると聞き逃すほど小さなバランスで録音されているのに対して、この歴史的名演ではハッキリ主張した音で聞こえてくる。

0:36から0:37にかけて歌っているRoyがアップで写っている画面で、店内の売り子と思われる姿がカメラの前を右から左に横切っている。まさにライブにしか有り得ないハプニングがそのまま使われている。

この曲でRoyとデュエット盤を出しているk.d.Langが大物美女コーラス3人のアップ(1:07から1:09まで)の中で、格別の思い入れがあるような様子に見て取れる。(考え過ぎかも)

数々の悲劇を乗り越えて、一時は過去の人とされた末に50歳を過ぎて、再評価の頂点に到達したRoyだからこそ到達できた境地を歌った名演である。

ライブ第10曲 Crying

ROY ORBISON – CRYING – LIVE 1988 – (HQ-856X480)

オリジナルと聞き比べてみよう。録音技術の差も大きいと思うが楽器個々の音がわかりにくい。さらにRoyの声が青年Royと思わせる若々しさで、やはり歴史的名演と比べ、この歌詞の内容の説得力では一歩譲るであろう。

スタジオ録音盤

Roy Orbison – Crying

Don Mclean(ドン・マクリーン) – Crying

1981年ロイが表舞台から消えていた時期にこのカバー曲が全米5位の大ヒットとなった。1977年にLinda Ronstadtがカバーして全米3位の大ヒットとなったBlue Bayouと合わせて、今から考えると後年ロイ復活のプロローグとなったといえる。

Crying – Don McLean

この曲はボランティア参加しているアーティストの一人であるk.d.Langもカバーしており、さらにロイともデュエットしている。このテイクは「Hiding Out」という映画で使われたらしい。映画のシーンを織り交ぜたPVと思われる。

Roy Orbison & k.d.Lang

CRYING (Music Video) Roy Orbison, K D Lang

もう一つ、ライブでこの曲を歌っているk.d.Lang。感情移入が過剰のような気もするが、ロイの追悼ライブのようでもある。彼女のロイに対するリスペクトぶりがよくわかり、心が揺さぶられる。

k.d.LangがRoy Orbisonについて語っている言葉が残っている。

『Roy Orbisonは型にはまった50年代のタフガイのイメージを破った人。テキサスのウィンク出身でありながら彼の音楽は繊細な芸術作品です。そして神秘的にソフトでロマンチックなところが普遍的なのだと思います。』

少し補足するとウィンクはテキサスの小さな田舎町。男はカウボーイのようにタフでなければいけないという保守的な考えが主流の場所である。

k.d.Lang

K D Lang's Crying

他にもいくつかカバーされている。

Del Shannon(デル・シャノン)

Del Shannon – Crying

Bobby Vinton(ボビー・ヴィントン)

Bobby Vinton Crying

Jay and The Americans

66年にカバーしてヒットした。

JAY AND THE AMERICANS – "CRYING"

映画「マルホランド・ドライブ(Mulholland Drive)」レベッカ・デル・リオ(Rebekah Del Rio)が歌う、スペイン語でCryingを意味するジョーランドー(Llorando)もRoyの作品のスペイン語版カバーである。

この映画の監督は、この連載(1)で紹介した映画「ブルー・ベルベット」と同じ鬼才デヴィッド・リンチである。2001年カンヌで監督賞を受賞している。

原曲の意味を変えたくないというレベッカの希望で、できるだけ元の英語の歌詞に近い形でスペイン語に訳されているという。

映画の中でこの曲が使われている動画もアップされているのだが、映画の印象が強過ぎるため(舞台で歌うレベッカが途中で失神するが歌はそのまま流れるシーンで使われた)楽曲そのもののイメージが薄くなってしまうので、敢えてここでは音楽にスポットを当てたものを紹介する。

Rebekah Del Rio(レベッカ・デル・リオ) – Llorando (Crying)

Rebekah Del Rio – Llorando (Crying)

日本で大ヒットした「浮気なスー」のDionもカバーしていた。61年12月に録音されたものの85年になるまで陽の目をみなかったバージョン。

Dion

Dion – Crying

オーストラリアのオーディション番組XファクターLive Showで歌われて反響を呼んだ。このように今なお歌い継がれていることに感動する。

Dean Ray

Dean Ray – Week 9 – Live Show 9 – The X Factor Australia 2014 (Song 2 of 2)

<歌詞>

I was all right for awhile
I could smile for awhile
But I saw you last night
You held my hand so tight
As you stopped to say, “Hello”

Oh, you wished me well
You, you couldn’t tell
That I’d been crying over you
Crying over you

When you said, “So long”
Left me standing all alone
Alone and crying, crying
Crying, crying

It’s hard to understand
But the touch of your hand
Can start me crying

I thought that I was over you
But it’s true, so true
I love you even more
Than I did before

But, darling, what can I do?
For you don’t love me
And I’ll always be crying over you
Crying over you

Yes, now you’re gone
And from this moment on
I’ll be crying, crying
Crying, crying
Yeah, crying, crying
Over you

<続く>

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