ライブのセットリスト
ライブ当日のセットリストは不明であるがDVDやCDの曲順に近いと思われる。
CDの曲順(リマスター盤、カッコ内は作者)
以下のようにこのライブCDは往年のロイ・オービソンのヒット曲のオン・パレードとなっている。さらに加えてサンでの初めてのシングルの両面の曲(5と12)や遺作となったアルバム「ミステリー・ガール」から2曲(4と14)を演奏している。
1.Only The Lonely(Roy Orbison,Joe Nelson)
2.Dream Baby(How Long Must I Dream)(Cindy Walker)
3.Blue Bayou(R.Orbison,J.Nelson)
4.The Comedians(Elvis Costello)
5.Ooby Dooby(Wade Moore,Dick Penner)
6.Leah(R.Orbison)
7.Running Scared(R.Orbison,J.Nelson)
8.Uptown(R.Orbison,J.Nelson)
9.In Dreams(R.Orbison)
10.Crying(R.Orbison,J.Nelson)
11.Candy Man(Fred Neil,Beverly Ross)
12.Go,Go,Go(Down The Line)(R.Orbison)
13.Mean Woman Blues(Claude DeMetruis)
14.(All I Can Do Is)Dream You(Billy Burnette,David Malloy)
15.Claudette(R.Orbison)
16.It’s Over(R.Orbison,Bill Dees)
17.Oh,Pretty Woman(R.Orbison,Bill Dees)
ここからは基本的に上記CDの曲順に従い、ライブ画像を中心に解説を加えていく。同じ曲であっても新旧を比較して聞けばロイ・オービソンといえども微妙に変化していることに気づくはずである。
品格の高さ
この夜のライブだけでなくロイ・オービソンの歌を聴いていると、品格というか格調というか気品というか・・・とにかくロックとは無縁と思われる優雅さを感じる。
朗々とした彼の歌声がまず誰でも考えつく第一の理由であろうが、他にもいくつか考えてみた。ロックにはシャウトが付き物であるが、彼の場合「ウガイ」と称される他に類を見ない独特の発声で観客を喜ばせる。
さらに彼は実に上手くストリングスを使いこなす。これもロックには珍しいことで、使っていても目立たないことが多い。この夜の演奏でもストリングスの比重は大きく、重要なウエイトを占めている。それが実に効果的で音楽全体に気品の高さを与えている。
彼の歌唱スタイルは東海林太郎のように棒立ちで動きが殆ど無く、おちょぼ口で歌うのでまるで腹話術の人形が歌っているようだと例えられる。
こうしてロイ・オービソン独特の歌の世界が構成され、哀調たっぷりのバラードに真骨頂があって、大ヒットは殆どその路線である。
60年代前半全盛期のオービソン、レコードのパンフレット
第1曲 Only The Lonely(オンリー・ザ・ロンリー)
1960年全米2位というロイ・オービソン初の大ヒットで、この曲によりスターの地位に着いた。6月6日にHot100に88位で初登場し、その後順調に上昇したこの曲が1位になるのを阻んだのはブレンダ・リーの「アイム・ソーリー」と後からやってきたブライアン・ハイランド「ビキニ・スタイルのお嬢さん」であった。
冒頭のこの曲を聞き始めると(知っている人は特に)聞き覚えのあるCDの音がそっくり再現されているので口バクじゃないかと疑うに違いない。実は自分もそうだった。
日本ではこのいわばロイ・オービソンの出世作はリアルタイムで知られることは殆ど無く、後にヒットを連発するようになってから一緒に広く認知されるようになったと思う。
この曲は共作者ジョー・メルソンとアニタ・カー・シンガーズが歌う「Dum-Dum-Dum-Dummy-Doo-Wah」のイントロで始まる。この導入部だけを聴いても大ヒット間違いなし、ポップスの歴史に残る素晴らしいイントロである。
しかし当初考えられていたイントロは、これとは全く異なるものだった。それでは寂しいと感じたモニュメント社長フレッド・フォスターは、この時既にアイデアが出来上がっていた「Come Back To Me(My Love)」のイントロを手直しして、この「Only The Lonely」にはめ込んだのである。結果は周知の通り大成功。
ライブオープニング Only The Lonely
この夜のライブの凄さを際立たせるため、ロイ・オービソンの同じ曲をいくつかのバージョンで聞いてみたい。
まずは700万回超の閲覧数のものと、オリジナルとタイトルに書かれたものの二つ。聞き比べると時間の経過によりロイの歌い方も微妙に進化していることがわかる。
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ライブオープニング Only The Lonelyの別バージョン
視聴回数2200万回
Monumentレコードバージョン
聞き比べた反応は人により違うだろうから話はこの夜のライブに戻る。どっしりとバックを固めているTCBバンドの演奏が実にいい感じ。暴れん坊ドラムのロニー・タットだがこのCDでは全編にわたって的確なリズム・キープに徹している。
しかし時折見せる名手ロニーの片鱗が実に見事に冴え渡っている。そしてこの「オンリー・ザ・ロンリー」ではジェームス・バートンがアコギ、ジェリー・ジェフがウッド・ベース(珍しい)を聞かせてくれる。
画像を見ればわかるようにボランティア参加の一流ミュージシャンの多くがギターを抱えている。その中でよく聞けばジェームス・バートンのアコギは一味違って、1分53秒付近でフレットと弦をこする音は彼のものと思われる。
サビのところ(46秒付近)でロイが「There goes my baby」と歌った後で、ロニーのバス・ドラとジェリーのベースが渾然一体に溶け合い「ダ、ダ、ダ、ダッ」と最高のリズムを刻んでいる。
またここでストリングスが切れ味の鋭いリズムを刻んでいるのも効果的である。ロイがストリングスの使い方に定評があるのもわかる。
ロニー・タットとギターを抱えたエルヴィス・コステロがアップで写っているのもこの付近である。
TCBバンドのもう一人グレンも目立たないがかわいい宝石のようなバッキング・リズムをピアノで刻んでいる。
この曲について「普通とは違った独特のリズム感」を説明しているブログ「WWLABELの音楽会」<削除された>を読んだが専門知識の無い自分には理解できなかった。興味のある人には貴重な情報かもしれない。
「孤独」「ブルー」といった言葉、美しいメロディー、流麗なストリングス・オーケストラに加えてロックするボレロリズムを絡めたバック、高く舞い上がるファルセットという構成は、「オペラ的」で、3オクターブ半といわれる驚くべき声域を持つ美声をうまく活かしており、誰にも真似の出来ない素晴らしい出来栄えである。
これはロック時代以降切り捨てられてきた要素、「美しいヴァイオリンの調べ」とか「感傷的なメロディ」とかを復活させたものである。
この「オンリー・ザ・ロンリー」から更にオービソンはそのスタイルに磨きをかけ、「クライング」「イン・ドリームス」「ランニング・スケアード」「イッツ・オーヴァー」「リーア」とこの夜も披露したヒット曲を連発した。
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