【中年が歌う曲と全く違う原詩】マイ・ウェイ|フランク・シナトラ

Artist(English)
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はじめに

 フランク・シナトラ(Frank Sinatra)の代表曲とも言えるヒット曲だがチャートでは最高で全米27位と高くないのは意外。

 しかしイギリスでは40位以内に75週間も滞在する、とてつもない記録を作った。

 68年の年末に録音され69年のはじめに発売された。原曲は67年のフランス語の歌「Comme d’habitude」である。

 この曲を聞いたポール・アンカが原曲とは全く無関係な内容の英語の詩をつけてフランク・シナトラに贈ったのがこの曲である。

原題「My Way」、邦題「マイ・ウェイ」

 歌詞の内容は死が近い男性が自分の人生で起こったすべての苦難に対して行ったことについて、後悔せず自信を持っているということである。

 またフランク・シナトラ(Frank Sinatra)のシングルが世界的なヒットとなって以来、この曲が数え切れないほど世界中でカバーされているが、カバーされた回数は史上2位である。(1位はビートルズの「イエスタデイ」)

 この曲はイギリスでは最も葬儀で演奏される曲であり、一方日本では卒業式で最も歌われる曲だという。

 フランク・シナトラ版の成立経緯を考えると故人の輝かしい「過去」の生き方を称える曲として位置付けるのが相応しいだろう。

フランク・シナトラ(Frank Sinatra)代表曲の誕生秘話

 秘話と書いたものの、あまりにも有名な話なので殆どの読者は既にご存知のことと思う。

 1967年ポール・アンカがバカンスで南仏に滞在していた時、クロード・フランソワの歌う「Comme d’habitude」を聴いて気に入り、その足でパリに行き権利交渉。その結果何故か無償で曲の版権を手に入れた。

 2007年のインタビューでは「いまいちのレコードだと思ったけど、何かを感じた」と語っている。

 2年後にフロリダでフランク・シナトラ(Frank Sinatra)と食事をした際、当時シナトラは自分の嫌いなポップスを歌わざるを得ない状況にあり、「こんな仕事は辞めてやるよ。もううんざりだ、とっとと辞めてやる」と語ったという。

 アンカはニューヨークへ戻ってから、元のフランス語の曲のメロディを微妙に変更して、シナトラの為に歌詞を書いた。

 アンカは朝5時に曲を作り終え、「フランクにネバダへ呼ばれた。彼はシーザーズ・パレスに居て、『お前のために特別だよ』と語った。」アンカはさらに語っている。

 「僕のレコード会社は、僕が自分自身のために曲をつくったのでないことを知ると怒った。でも僕は『ね、僕はこの曲を書くことはできるけど、この曲を歌う人ではないよ』と言った。この曲を歌うのは他の誰でもなく、フランクこそふさわしい。」

 なお、アンカはシナトラが録音した直後の1969年にこの曲を録音しており、1996年には映画『マッド・ドッグス』でガブリエル・バーンとのデュエットを、2007年にはジョン・ボン・ジョヴィとのデュエットを発表している。

 フランク・シナトラ(Frank Sinatra)のバージョンは1968年12月30日に録音され、1969年のはじめに発売された。

 アメリカでは総合シングル・チャートのビルボード・ホット100で27位、ビルボード・アダルト・コンテンポラリー・チャートで2位を記録し、イギリスでは40位以内に75週間もランクイン(1969年4月から1971年9月まで)する、とてつもない記録をつくった。75位以内ではさらに49週間もランクインしたが、最高位は最初にランクされた5位止まりだった。

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シナトラ&アンカの動画

Frank Sinatra(フランク・シナトラ)

Paul Anka(ポール・アンカ)

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シナトラ版英語詞と日本語訳詞の大きな差異

 マイ・ウェイを聴いたことのない日本人はまずいないだろうが、その殆どは日本語歌詞で聴いたのではないだろうか。

 しかもカラオケで中年オヤジが自己陶酔して高らかに歌いあげているというマイナスイメージが残念ながら定着した曲である。

 日本語訳詞のベースになっているフランク・シナトラの英語詞と比べてみると、訳詞と呼べないほど大きな差異があることに気づくはずである。

 そもそもこの英語詞は、「中年のおっさんが、今まで生きてきた人生を自己肯定して、高らかに歌い上げる歌」などではなく、「年老いた老人が、病床の死の間際に自分の人生を振り返る歌」だからである。

 歌詞は”And now, the end is near,And so I face the final curtain”で始まる。

 いきなり最初から「そして、今、死は近い。私は人生の終幕に直面している」である。どうしてこれが訳詞では正反対の「今、船出が、近づくこの時に」と変貌してしまうのか。

 また”And now”という冒頭の歌詞は、この前に主人公が既に誰かと話していて、それを受けて歌詞が始まっていることを示している。おそらくその相手は、奥さんか家族であろう。

 そして最後に自分の人生を振り返って語り始めるのが、この「マイ・ウェイ」の歌詞である。

 その中には、人生への自己肯定の気持ち、後悔や反省、辛かった日々も語りながら、それもすべて淡々と「自分のやり方を成し遂げただけ(I did it my way)」とシナトラは語り続ける。

 最後の方に来て、歌詞の主語が突然、Iからheに変わる。ここで”he”とはイエスキリストと考えるのが妥当であろう。

 自分が”kneels(ひざまずく)”対象は神であり、神の目から見て、”The record shows I took the blows(自分が嵐のような人生を選択したのは明らか)”であるとし、それが私の人生だったと締めくくっている。

 そして、それまでの静かな”I did it my way”とは違い、最後だけ”and did it my way”と高らかに歌い上げるのだが、それは実は死の断末魔なのだ。

 そのことは、直後に静かなストリングスが流れ、「そう、それは私の人生だった(Yes, it was my way)」と囁くような過去形の歌詞で終わることからわかる。

 その後多数のミュージシャンがカバーした”My Way”だが、皆最後の”Yes, it was my way”の部分はなく、”and did it my way”と高らかに歌い、それで終わるバージョンが定着している。歌唱力に自信があるボーカリストが、ステージでその力量をひけらかすための歌に変貌してしまった。

 そうした影響もあって、布施明が日本語詞で歌った「マイウェイ」にも最後の”Yes, it was my way”に相当する部分はない。それにより日本語版では、本来の”My Way”の歌詞の意味が、「中年が、振り返った人生を肯定し、高らかに歌い上げる賛歌」に大きく変貌してしまった。

 なお日本語詞にはいくつものバージョンが存在するが、代表的なものは

岩谷時子
中島淳・片桐和子共作

 である。本文で取り上げた布施明バージョンの作詞者は中島淳・片桐和子共作である。

史上2位のカバー曲数を誇る

Dorothy Squires(ドロシー・スクワイア)

 全英シングルチャートでシナトラのロングヒットが続いてる最中に全英25位を記録

Nina Simone(ニーナ・シモン)

CHARA

Shirley Bassey(シャーリー・バッシー)

Nina Hagen(1980年)

Andy Williams(1969年)

Bobby Solo

Robbie Williams

 2011年10月10日にロイヤル・アルバート・ホールで「マイ・ウェイ」を演奏、DVD『Live At The Albert』に収録されている。

Northern Kings

 フィンランドのメタルのカバーバンド。2008年のアルバム「Rethroned」に収録

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史上2位のカバー曲数を誇るの続き

Matt Monro

Celine Dion

Tom Jones

Shane McGowan

 1957年生まれ英国パンクバンドのリードボーカルでシンガーソングライター

Patti Austin

 2011年のアルバム『Sound Advice』に収録されている。

Gipsy Kings(ジプシー・キングス)

 ある夜、偶然彼らの演奏を聴いた一人の老人が、彼らの演奏の素晴らしさに感動して涙を流したが、それがただの老人ではなかったことが、彼らを世に出すきっかけになった。

 その老人こそ、あの喜劇王「チャーリー・チャップリン」だったのだ。それを知った彼らは「世界を泣かせた男を俺たちが泣かせた」と、大いに感動したという。実はその時彼らが演奏した曲こそ、「マイ・ウェイ」だったらしい。

Vicente Fernandez – Mi Manera

 メキシコ人歌手のヴィセンテ・フェルナンデスのスペイン語バージョンの曲名は「Mi Manera」である。

Mireille Mathieu – Comme d’habitude

 シャンソンの原曲バージョンのカバーをミレーユ・マチューが歌っている

日本のカバー

布施明

 布施明の日本語によるカバー(訳詞者は中島潤)は1972年にシングルとして発売され、その後「NHK紅白歌合戦」でこの曲を3回(1972年、2004年、2009年)披露した。

尾崎紀世彦

 1972年のアルバム『KIEYO’72/尾崎紀世彦アルバムNo.5』(英語詞)・『KIEYO in PERSON 尾崎紀世彦オン・ステージ』(岩谷時子による日本語詞)でカバー、『尾崎紀世彦の世界』他にも収録されている。

美空ひばり

ミュージックフェア(フジテレビ)で2回(1984年1月22日、1986年1月12日)この曲を歌唱している。また、アルバム「美空ひばり全曲集 歌は我が命」にもライブ音源で収録されている。

藤圭子(1976年9月24日新宿コマ劇場)

伊東ゆかり

加山雄三

イージーリスニングのカバー

Raymond Lefevre

Paul Mauriat

Bon Jovi – It’s My Life

 カバーではないがフランク・シナトラの”My Way”にインスパイアされて作られた曲

 ボン・ジョヴィの「イッツ・マイ・ライフ」は明らかに「マイ・ウェイ(My Way)」を意識している。

 また「過去」でなく「今」だと歌っているところが、プロテストソングのようである。歌詞の中で「マイ・ウェイ」から引用しているのは、「My heart is like an open highway  Like Frankie said I did it my way」
またコーラス部分の「これが俺の人生だ。今しかないだろう。いつまでも生きられない。生きている間、生きたいだけだ。それが俺の人生だ」というフレーズが秀逸。

<歌詞>

英語(フランク・シナトラ版)

And now, the end is near
And so I face the final curtain
My friend, I’ll say it clear
I’ll state my case, of which I’m certain
I’ve lived a life that’s full
I traveled each and every highway
And more, much more than this, I did it my way

Regrets, I’ve had a few
But then again, too few to mention
I did what I had to do and saw it through without exemption
I planned each charted course, each careful step along the byway
And more, much more than this, I did it my way

Yes, there were times, I’m sure you knew
When I bit off more than I could chew
But through it all, when there was doubt
I ate it up and spit it out
I faced it all and I stood tall and did it my way

I’ve loved, I’ve laughed and cried
I’ve had my fill, my share of losing
And now, as tears subside, I find it all so amusing
To think I did all that
And may I say, not in a shy way
Oh, no, oh, no, not me, I did it my way

For what is a man, what has he got?
If not himself, then he has naught
To say the things he truly feels and not the words of one who kneels
The record shows I took the blows and did it my way

[instrumental]

Yes, it was my way

原曲(フランス語)版

Comme d’habitude いつものように Claude François
Je me leve et je te bouscule Tu n’te reveilles pas
Comme d’habitude Sur toi je remonte le drap
J’ai peur que tu aies froid Comme d’habitude
Ma main caresse tes cheveux Presque malgre moi
Comme d’habitude Mais toi
Tu me tournes le dos Comme d’habitude
Alors je m’habille tres vite
Je sors de la chamber Comme d’habitude
Tout seul je bois mon café Je suis en retard
Comme d’habitude Sans bruit je quitte la maison
Tout est gris dehors Comme d’habitude
J’ai froid Je releve mon col Comme d’habitude

Comme d’habitude Toute la journee
Je vais jouer A faire semblant
Comme d’habitude Je vais sourire
Comme d’habitude Je vais mAme rire
Comme d’habitude Enfin je vais vivre
Comme d’habitude Et puis
Le jour s’en ira Moi je reviendrai
Comme d’habitude Toi
Tu seras sortie Et pas encore rentree
Comme d’habitude Tout seul
J’irai me coucher Dans ce grand lit froid
Comme d’habitude Mes larmes
Je les cacherai Comme d’habitude

Comme d’habitude MAme la nuit
Je vais jouer A faire semblant
Comme d’habitude Tu rentreras
Comme d’habitude Je t’attendrai
Comme d’habitude Tu me souriras
Comme d’habitude

Comme d’habitude Tu te deshabilleras
Comme d’habitude Tu te coucheras
Comme d’habitude On s’embrassera
Comme d’habitude

Sid Vicious My Way

And now, the end is near
And so I face the final curtain
You cunt, I’m not a queer
I’ll state my case, of which I’m certain
I’ve lived a life that’s full
I’ve traveled each and every highway
And more, much more than this
I did it my way

Regrets, I’ve had a few
But then again, too few to mention
I did, what I had to do
And saw it through without exemption
I planned each chartered course
Each careful step along the highway
And more, much more than this
I did it my way

There were times, I’m sure you knew
When there was fuck fuck-all else to do
But through it all, when there was doubt
I shot it up or kicked it out
I faced the wall and the world
And did it my way

I’ve laughed and been a snide
I’ve had my fill, my share of losing
And now, the tears subside
I find it all so amusing
To think, I killed a cat
And may I say, not in a gay way
Oh no, oh no not me
I did it my way

For what is a prat, what has he got
When he wears hats and he cannot
Say the things he truly feels
But only the words, of one who kneels
The record shows, I fucked a bloke
And did it my way

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